ごあいさつ

公益社団法人奈良県看護協会会長

奈良県看護協会

会長 春木邦惠

 奈良県看護協会(以下、本会)は2024年度設立40年を迎えます。そのような節目に会長を拝命いたしました。
 さて、2040年問題とされる少子化による労働人口の減少による慢性的人材不足は、ますます深刻化しています。看護管理者の人材確保のご苦労は並々ならぬものです。そして、超高齢化に伴う医療依存度や健康ニーズは高まり、求められる看護職の役割は多岐にわたり、それを担うための解決策への取り組みは永遠です。昨年、1992 年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づき同年制定された指針が約30年ぶりに初めて改定されました。「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」は、1980年代の深刻な看護職不足に対応するため制定された法律ですが、30年の時を経て看護職は倍増してるにもかかわらず、現場の充足感は全く得られていません。看護のニーズが増していることだけではなく、働けていない看護職の実情にも憂慮しなければなりません。2024年3月日本看護協会広報部が提示した〖新人看護師の看護管理者が考える主な退職理由〗(n=1126)に、「健康上の問題(精神的疾患)」49.4%、「看護職への適正への不安」45.5%、「看護実践能力への不安」40.5%が上位を占めています。これは新人看護職以外にも該当することだと、看護管理者の経験上感じています。看護職は、生命に直接関与する恐怖や患者家族と組織の人間関係など、様々なストレスの渦中にあります。日本初の公的医療機関は、聖徳太子の「慈悲の心」からといわれています。その聖地奈良でその心を大切に、本会も看護職一人ひとりにこの道に進んでくれたことに感謝し、できるだけ長く途切れることなく様々な形で働けるよう支援していきたいと思います。
 また、看護職の基本指針の改定として、看護師等の養成や就業の動向、新興感染症や災害への対応など、さまざまな観点から看護師等の確保対策が検討されています。就業の動向には看護資格の活用基盤強化としての第7次NCCSシステムの運用、看護におけるDX(Digital Transformation)の推進など、聞きなれない言葉もめまぐるしく出てきます。今や効率的な業務への改善、タスクシフト/シェア、チーム医療や地域包括ケアの推進等は当然の認識となりました。質の高い看護の提供、災害支援や危機管理に備える人材育成など、本会のやるべきことは山積しています。
 このような現状において、会長としての責務は、迅速な情報取得と提供、例えば日本看護協会理事会から得られた情報をしっかりと理解しわかりやすいように本会の理事会で情報提供し、本会としての方針を具現化して伝えられるようにすることです。そして、変化に柔軟で前向きな思考、過去の規定に縛られない発想、努力を惜しまない姿勢を忘れないよう努力いたします。私も一人の看護師であり本会の会員です。現場の状況を常に注視し、そこからの声をよく聴き、看護職は何より他者の心を癒す職種であることに誇りをもって前進します。
 どうか忌憚のないご意見をいただければ大変うれしく思います。今後とも引き続きご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2024年6月15日